第22回山名会総会を群馬県で実施
去る11月10~11日に高崎市山名町及び太田市を訪ねて第25回山名会総会を行い、山名氏の発祥の地や山名の本家筋である新田氏ゆかりの史跡を巡ってきました。久々の泊まりがけの総会行事、また関西を離れ群馬での開催でしたので、多くの皆様のお世話になり実施することが出来ました。今回はその概要をお伝えします。
山名会総会当日の11月10~11日の両日は共にこの上ない好天に恵まれ、気温も暑からず寒からずで絶好の行事日和となりました。
活動を休止していた旧山名会から平成24年に会を引き継ぎ、昨年までは関西を中心とした会場で総会行事を行ってきました。また、この3年程は、山名会の存在を一般の人にも知って貰おうと、その時々にゆかりの先生をお招きして、一般公開の山名会歴史講演会を中心とした総会行事を継続してきました。
今回は久々に史跡探訪を中心とした行事で現山名会になってから初めての関東・群馬での開催と言うこともあり、準備する事務局としては不案内な状況で、果たして総会と言うに相応しい参加者がお願い出来るかどうか不安でしたが、神奈川の草山副理事長には訪問先の選定から宿泊先や昼食場所の下調べや、総会下見のご案内までお世話いただき、お陰で計画もスムーズに立案出来て、総会には20名の皆さんのご参加を頂けました。
第1日目(11月10日)
高崎市役所に午前11時半に集合でしたので、関西からの参加の方には早朝からの出発となったことかと思いますが、予定の時間までには市役所21階の展望フロアーに皆さんが集合。同階の展望レストランで素晴らしい眺望を楽しみながら昼食をとり、皆さんとの久々の再会を喜び、午後からの探訪先について話題が弾みました。
永福寺
市役所前から小型の観光バスに乗り込んで、先ずは山名義範公の父である新田義重公菩提寺の永福寺を訪れました。同寺には義重公の古い墓石の一部をはめ込んだ供養塔が建立されており、参加者全員で供養塔に線香を立てて簡単にお参りをさせていただきました。
この永福寺の向かい側の山は、観音山丘陵と言われる山並みで、尾根には寺尾上城・寺尾中城があり、義重公は頼朝の鎌倉挙兵の際に直ぐに出兵せず、しばらく寺尾中城に兵を集結させ様子見をしていたと言う言い伝えがあります。更に観音山丘陵の尾根続きには、茶臼山城・根小屋城・山名城(寺尾下城)へと続いています。
山名八幡宮
永福寺からバスで観音山丘陵沿いに5キロ程南に進むと山名氏の氏神である山名八幡宮へと至ります。旧山名会時代の平成4年・平成12年の2回、群馬で山名会総会を行った折りには、八幡宮の一室をお借りして行事を行ったようですが、あいにく七五三シーズンと重なり、今回は自由参拝の形でお邪魔しました。
境内をゆっくりとお参りさせていただいた後は、山名会有志が30年前に奉納した神馬像の前で記念写真を一枚撮影して、次の山名城址へと向かいました。
山名城址
山名城址は前述のごとく観音山丘陵の南端、山名八幡宮の裏手に位置する小高い山城です。近くにはユネスコの「世界の記憶」に指定された「上野三碑」の一つ「山上碑」が有り、最近ではそちらの方が注目を浴び、山名城の存在は忘れられているような感じで少し残念でした。
落ち葉が積み重なった登城道を上がること10分程で山名城の本丸跡に上がって来られるのですが、周囲は大きくなりすぎた雑木が視界を遮り、展望台に上がっても残念ながら全く視界が開けません。木々の隙間ごしに高崎の市街地などが見えましたので、昔は結構見晴らしが良かったのでは無いかとかと思います。
光臺寺
光臺寺は山名氏が初代から八代まで過ごした山名居館跡に建つ寺院と言われます。江戸時代はこの地で栽培された光臺寺莨が将軍への献上品として重宝されていたとか。
こちらでは光臺寺の檀家の方々もご同席の上、ご住職に山名氏歴代の供養と山名会の発展祈願の法要を勤めていただきました。
また、法要後には光臺寺のお檀家で高崎商科大学の特認教授である熊倉浩靖先生に、飛鳥~奈良時代に渡来人によって上野の地に建てられた「上野三碑」の歴史的価値について詳しくお教えいただき、山名・新田氏がこの地に入って来るずっと以前から、この地域は文化的にも開かれていた地であったと実感できました。
年次総会・懇親会
講演の後は光臺寺の本堂を少しの間拝借して、山名会の年次総会を行いました。総会については、総会報告のページをご覧ください。
総会終了の時間には、すっかりと日も落ちてしまいました。宿泊場所は翌日の行事に備えて、太田市の藪塚温泉としましたので、光臺寺からバスで40分程の道のりを藪塚温泉へと向かいました。
藪塚温泉は奈良時代開湯の歴史ある温泉で、新田義貞の秘湯とも呼ばれます。こちらの旅館に宿を取り、懇親会の席では、総会の時間中に十分相談が出来なかった来年度の活動計画等について意見を交換し、その後もゆっくりと名湯につかりながら山名会の将来像について、ご意見を頂戴しました。
第2日目(11月11日)
第2日目は太田市内の新田氏ゆかりの史跡を巡る計画で、新田氏史跡ガイドの北村さんと太田市教委の元・文化財課長の宮田さんに当日の訪問先の選定からご案内までの全てをお世話になりました。(尚、お二人とは山名氏史料館を見学に来られたご縁で、今回のご無理を引き受けていただけました。この場を借りまして、ご協力に深く感謝申し上げます。)
生品神社
最初の見学先は新田義貞が鎌倉倒幕の旗揚げをした生品神社で、宮田さんの車の先導に従い、バスの中では北村さんが事前の解説をしていただきながら神社へと向かいました。
神社の境内入り口には太刀を頂く義貞像が参拝者を迎え、広葉樹の多い参道を宮田さんの案内で拝殿へと進んでいきます。
義貞の挙兵の地ですから、大きな神社を想像していたのですが、着いてみれば小ぢんまりとした普通の神社で、少し意外な気持ちがしました。
言い伝えでは、義貞が生品神社で挙兵したおりには、騎馬武者150騎程(従者をいれるとその数倍)であったが、鎌倉に向かう途中で知らせを聞いた新田の流れを汲む里見一族等や、足利の嫡男である千寿王が、これに加わり義貞の軍勢は爆発的に増えて、最終的には20万騎に達したとも言われます。普段は静かな境内なんでしょうが、当日は近所の氏子さん総出で冬を迎える前の清掃をなさっておられました。
金龍寺・金山城
次は太田市内に向けてバスを走らせて、金龍寺と新田金山城へと向かいました。
金龍寺は新田氏の流れを汲む横瀬氏が菩提寺として寺を開き、お寺の裏手には一族を祀る9基の供養塔があり、その中央にある一回り大きな供養塔は、江戸時代の義貞公三百回忌法要の際に建立されたものらしいです。
こちらの供養塔では、塔の前に進んでお線香を捧げさせていただきました。また、金龍寺のご住職からは、新田義貞に関する研究誌を事前に届けていただきました。参加者に貴重な資料を配れましたことを感謝申し上げます。
金龍寺の背後にある金山城は標高250メートル程の山城ですが、麓からの登りは急斜面でバスはつづら折りの坂道を登らねばなりませんでした。山上駐車場でバスを降りて、そこからは宮田さんの案内に従い尾根に沿って本丸を目指して歩くと、北側(搦手)は落差数十メートルの崖が城壁代わりをし、南側(追手)は上からの見通しが利く斜面で、この場所が天然の要害であることが感じられます。
この地は険しいだけでは無く、城域内には山頂が近いにも関わらず月池・日池が常に水をたたえて、この城の神秘性を高めています。
地形を巧みにいかした曲輪や堀切、土塁等で防御を固めて敵の侵入を阻み、敵を追い詰める虎口周辺は遠近法も取り入れた作りで、石垣の造形が見事でした。
世良田東照宮・長楽寺
午後からは山名義範の弟である世良田(得川)義季が開いた長楽寺と世良田東照宮がある新田荘歴史公園に向かいました。
徳川家康は世良田(得川)義季を徳川氏の太祖と崇めて、世良田の地を徳川氏発祥の地と定め、長楽寺を再興させて歴代の供養塔などを整備して盛大に祀りました。また徳川三代家光は、東照宮建て替えの際に古い社殿を世良田に移築して世良田東照宮としたと言うことです。
世良田義季が本当に徳川の祖であるかは、不明なところですが、徳川家康が「我が太祖」と考え清和源氏の一門と思われることを望んで、手厚く祀ったのですから、そう言う事なのでしょう。
徳川・満徳寺跡
最後の訪問先は、縁切り寺の満徳寺跡にある新田義重夫妻の墓と伝えられる供養塔に向かいました。
新田義重は兄弟の中で義季を一番可愛がり、晩年は義季の館に共に住み、没後は邸内に作られた墓に葬られたと言われます。
満徳寺は新田(世良田)義季が創建し、娘を初代の住持として寺を持たせてと言うことですので、今では広々とした畑が広がっている寺の裏手ですが、その昔は義季の居館も満徳寺に隣接したこの地に有ったのだと思われます。
昔の人のお墓と言うものは同一人物でも各地に有るものですが、奇しくも今回の史跡探訪では、高崎市にある義重のお墓で始まり、太田市にある義重夫婦のお墓で行事を終える形となりました。
史跡ガイドのお二人とは、満徳寺でお別れをし、バスは予定通りにJR熊谷駅に3時前に到着して、無事に行事を終了することができました。
今回の行事では、1日目には光臺寺のご住職に、山名氏歴代の供養と熊倉先生のご講演のお世話だけでなく、檀家さんにまで声を掛けていただき、賑やかに我々をお迎えいただきました。また、2日目には、北村さんと宮田さんに、時間配分まで考えた上で丁寧に案内いただき、大変に有り難かったです。
その他、多くの協力者のお陰で1泊2日の山名会行事が充実した内容となりました事、お礼申し上げます。
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